この恋、国家機密なんですか!?
ただの事故渋滞とか、急な大型台風とかなら、彼らを落ち着かせ、安心させることはできると思う。
だけど、今私たちが巻き込まれているのは、テロだ。
下手に動いたら、人質全員が危険に巻き込まれちゃう。
どうしよう……いったいどうしたら……。
そう思う一方で、頭の片隅でほんの少し、今巻き込まれたのがあの妊婦さんじゃなくて、私でよかったと思った。
そんなとき。
「う……っ!」
「……ばあさん?ばあさん!」
すぐ後ろで、うめき声とそれを心配する声が聞こえた。
縛られながらも振り返ると、ひとりのおばあちゃんが、胸を押さえて丸くなっている
額には汗が浮かんでいて、顔色が悪い。
「どうしました?」
「添乗員さん……ばあさんが、ばあさんが……」
「落ち着いて。もしかして、持病がおありですか?」
そのおばあちゃんの旦那さんと思われるおじいちゃんは、こくりとうなずいた。
「心臓が弱くて……」
おじいちゃんは涙目で、ばあさん、ばあさんと呼びかける。
だけどおばあちゃんは苦しそうにするだけで、返事ができないみたい。
もおおお、持病があるならバスに乗る前に言っておいてよ!
と、いつものトラブルだとそう思うのだけど、今はそんなのんきな場合じゃない。