この恋、国家機密なんですか!?
おお、私も有名になったもんだ……嬉しくないけどね。
「人質なら、私一人でもじゅうぶんなはずよ。お願いだから、みんなを解放して……きゃっ!」
交渉の途中で、下っ端が私を無理やり立たせた。
「な、なにするのよ!」
立ち上がると、代表のところへと背中を押される。
私は言う通りにするしかない。
「伊藤唯さん。お前の勇気に免じて、その夫婦は解放してやろう」
代表がそう言うと、下っ端たちが倒れたおばあちゃんとおじいちゃんのロープを切った。
それぞれ抱えられるようにして、止まっていたエレベーターの扉を開けられる。
そこに投げ込まれるようにした夫婦。
下っ端が中のボタンを押すと、エレベーターの扉が閉まっていく。
その隙間から、両手を合わせて私に頭をさげるおじいちゃんの姿が見えた。
良かった……。
こんな騒ぎになっているんだもん、下にはパトカーかと救急車とか、色々出動してきているはず。
どうか、おばあちゃんが助かりますように……。
「これで満足か?」
はっと気づくと、隣に立っていた代表が笑っていた。
返事をする前に、何かがお腹にめりこむ。
殴られた、と思うより先に、すさまじい痛みと吐き気が、私を襲った。