この恋、国家機密なんですか!?
「ごほっ、ごほ……っ」
床に倒れた私は、苦しさのあまり咳き込む。
生理的な涙がにじんで、呼吸すらままならない。
「たかが添乗員が、英雄きどってんじゃねえよ」
ほどけた黒髪をひっぱられ、むりやり顔を上げられる。
「おい、動画を取れ」
代表は下っ端に指示をする。
動画って、なんの?
ぼーっとする頭で考えても、答えなんかわかるはずもなかった。
「タイムリミットが近いからな……警察はまた人質を犠牲にしてでも、強行突入しようと考えているんだろう。そんな気をなくさせてやる」
下っ端がスマホを構えると、代表は下世話な表情で笑った。
弱いものをいたぶるのが、楽しくて仕方がないと言っているような目で。
「警察に連絡しろ。要求をのまない限り、この女を痛めつけた動画をインターネット上に5分おきに公開してやるって」
え……。
「篠田宗一郎には、騎士を殺された恨みがあるからな……その報復として、お前には生きていなかった方が良かったと思えるくらいの痛みと辱めを与えてやろう」
生きていなかった方が、良かったと思えるくらいの……?
ちょっと待って、何するつもりなのー!?