この恋、国家機密なんですか!?
──プシャァァァァッ!!
水がホースから勢いよく放出されるような音とともに、視界が真っ白になった。
なにこれ!
代表に腕をはらわれたようで、私はよろける。
するとその背中を、倒れないように誰かが支えてくれた。
少し苦しい呼吸でそちらを見ると……。
「こっちへ!」
ぐい、と縛られたままの腕が引っ張られた。
白い煙の中から脱出すると、そこにいたのは……。
「あ、あなたは……」
さっき宗一郎さんと一緒に歩いていた、背の小さな女の人だった。
彼女は抱えていた消火器を置き、足元にあったナイフで私を拘束していた縄を切った。
代表がさっき捨てたナイフだ。
「唯さん、今のうちにみんなと一緒に逃げて!あっちに非常階段があるから!」
な、なんで私の名前を?
彼女は、人質の方を向く。
「みんな、立って!今のうちだから!」
なんとなく幼さの残る声でそう言うと、突然ピンクのスマホを取り出し、叫ぶ。
「防火扉、閉めてください!」
防火扉?
「早く!みんな、こっち!」
幸い足を拘束されていなかった人質たちは、支え合いながらなんとか立ち上がる。
その頭上で、ゴウンという音がした。