この恋、国家機密なんですか!?
ハッと見上げると、非常階段へのドアの少し手前から、シャッターのようなものがゆっくりと降りてきている。
「階段にさしかかったら、警察がいます!慌てないで、指示に従って、ゆっくり避難してください!」
と言われても、この状況でゆっくりできる人はいない。
テロリストたちの視界が奪われているいまのうちにと、人質が走り出す。
すると。
──ドン!
まるで爆発のような音がして、みんなが身をすくめた。
消火器の霧の中から、誰かが発砲したみたい。
「宗一郎さん!」
私はそっちに向かって叫ぶ。
「唯さんっ、早く!」
また女の子に手を引かれたけど、私はそれを反射的に振り払った。
置いてなんか、いけない。
防火扉は容赦なく閉まっていく。
人質は順調に数を減らして、非常階段へと消えていく。
それでも私は、行けない。
「唯さん!」
聞き覚えのあるバリトンボイスがして、ハッとそちらを見た。
すると、もう女の子の頭くらいにまで下がっていた防火扉が、がしんと音を立てて止まった。
ううん、止まったんじゃなくて、止めてるんだ。
防火扉を肩に乗せた状態で受け止めていたのは、高浜さんだった。