この恋、国家機密なんですか!?


……夢の中で、昔の恋人が出てくるというのは、よくある話だ。

俺のような場合は、『私のことはもう忘れて、幸せになってね』とか言われるのが、お約束のパターンなんだろう。

だけど、詩織はそうしない。

……いいんだ。

俺は責められて当然だし、お前のことを忘れるつもりもないから。


5年前。

都庁立てこもり事件で、一番に殺された詩織の遺体を目にしたとき。

実を言うと、あまり記憶がない。

ただ俺は、現場の特殊部隊の指示も無視して、テロリストに無差別に発砲し……。

結果、3人に致命傷を与えたのだと、あとで教えられた。

自分自身も銃弾をくらって、気を失って、目が覚めた途端に突き付けられた事実。

もう警察なんかやめようと思った。

こんな自分がいてはいけないと思ったからだ。

だけど、どうしてもやめられなかった。

詩織と同じような思いをする人間を、ひとりでも減らすこと。

それが、俺に残された使命のように感じたから。

都合よく考えていると言われれば、それまでだけれど。


< 182 / 214 >

この作品をシェア

pagetop