この恋、国家機密なんですか!?
「でも、結婚したいならすぐそんな男とは手を切った方がいいよ」
涼子が乗り出す。
「だって唯、その人の名前しか知らないんでしょ?住所も教えてくれないなんて怪しいよ。本当はもう結婚してるんじゃないの?」
「う……」
私は言葉につまる。
そうなんだ。
宗一郎さんは、私に名前しか教えてくれない。
こちらの部屋に来るばっかりで、自分の部屋には呼んでくれない。
住所や電話番号さえ、教えてくれない。
仕事は公務員で間違いないと思うけど、詳しい内容は知らない。
たまにお土産でブランドバッグや、各地の銘菓なんかをくれるから、お金はないわけじゃないと思う。
「……やっぱり、怪しいよね……」
最初はそれでもかまわないと思ってた。
でも、30手前になって、急に焦りだした。
そのとき聞いても、もう遅い。
彼は何も話してはくれなかった。
「不倫の可能性、大ね。奥さんの体に飽きて、誰かを縛りたくなったときにだけ、唯のところへ……」
「いやああああ、やめてええええっ!」
私を脅したはずの里枝の言葉は、マキさんを刺激してしまったようだ。
「マキさん、マキさんの旦那様は大丈夫でしょ?お子さんもいて、幸せじゃないですか」