この恋、国家機密なんですか!?


横浜ベイブリッジを通り、私たちが着いたのは、あるカトリックの教会だった。

白くて丸みをおびた3角屋根。

遠くからでも、キレイなステンドグラスが見えた。

観光客もちらほらいたけど、私たちは教会の中には入らず、その裏手へと歩く。

宗一郎さんの手には、小ぶりなユリの花束。

それを見て、私は理解した。

ここは……詩織さんの眠る場所だ。


「彼女はカトリックでね」


宗一郎さんはそう言って、私を案内する。

あまり派手なかっこうをしてこなくて良かった。

どこかで、ここへ案内されることを予感していたのかもしれない。

静かで、ところどころに十字架の形の墓石が並んでいる霊園。

そのある墓石の前で、宗一郎さんは足を止めた。

その墓石にはたしかに、詩織さんの名前がアルファベットで刻まれていた。

宗一郎さんはそっと花束を供える。

そして、自分と同じくらいの高さの墓石を見つめた。


「カトリックは、故人には祈らないそうだ。もう天国へ行っていて、墓にはいないという考えだそうだから、人々は故人の代わりに神に祈りを捧げるらしい」


それでも、宗一郎さんはここへ来たかった。

ここで、詩織さんと話をしたかったんだね。



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