この恋、国家機密なんですか!?
「やっと、ここへくる勇気が持てた。彼女のおかげだよ、詩織」
宗一郎さんはなぜか私の肩をぽんと叩いた。
そして、なぜか墓石ではなく、私の方を見つめる。
「唯があのばあさんのためにテロリストの前に出て行ったとき、なんてバカなんだと思った。だけど同時に、誇らしくもあった。ああ、俺が認めた女なだけあるなって」
「へ……」
「唯がそんなに強いとは思ってなかった。俺はまだ、お前のことをよく知らないみたいだな」
宗一郎さんは微笑むと、墓石へと視線を移す。
「詩織……すまなかった」
しぼり出した声は、いつもよりもかすれていた。
宗一郎さんは目をつむる。
天国の詩織さんへ、祈りを捧げているのかもしれない。
私も、宗一郎さんの横で、黙って目を閉じる。
もう天国に行っているというのだから、「どうか安らかにお眠りください」というのも違う気がして。
なんて言葉をかけていいのかわからないまま、時間が過ぎた。
やがて、宗一郎さんが顔を上げた気配がして、私も目を開ける。
すると宗一郎さんは、静かに、詩織さんの墓石に話しかけた。