この恋、国家機密なんですか!?
「詩織……まだあれから5年しかたっていなくて……自分でも早すぎるとは思うけど」
黙って聞いていると、宗一郎さんはおもむろに私の手をにぎった。
視線は、墓石に集中したままで。
「けど……俺はこいつと、新しい人生を歩き出したいと思っている。それが、俺の出した決断だ」
「宗一郎さん……」
それって……。
涙がにじむ。
宗一郎さんは、結婚はしない主義だと言っていた。
婚約者の詩織さんを失った心の傷が、あまりにも大きすぎたんだろう。
それなら、それでかまわない。
お母さんたちはがっかりするかもしれないけど、私は。
宗一郎さんが、そう言ってくれただけで、じゅうぶん。
一緒に、新しい日々を初めていければ、それでじゅうぶんだ。
見上げた空は、青く晴れ渡っていた。
そこへ一筋の飛行機雲が、白い線を描いていった。