この恋、国家機密なんですか!?


「……ん……」


ああ、私、眠ってたんだ。

ゆっくりとまぶたを開けると、すっかり暗くなった部屋が網膜にうつる。

もう目隠しも手を縛っていたベルトもないことに気づいたのは、背後からぎゅっと、抱きしめてくれた腕があったから。


「おはよう。と言っても、夜だが」

「……ですね」


抱きしめてくれる腕の感触が心地よくて、なかなか起きられない。

ずっとこうしていたいな……。

目隠しされて感じてしまったという羞恥の記憶もしっかりあるから、宗一郎さんの方はまだ向けないけれど。



「唯……」


宗一郎さんの声が、耳をくすぐる。


「この前宣言したとおり、俺はもう誰も殺さない。それが、テロリストであろうと、連続殺人鬼であろうと」


突然の物騒な単語に、体が震えた。

彼はそんな私を、さらに強く抱きしめる。

彼が誰も殺さないと誓ったのは、もう余計な憎しみを生みたくないからだろう。

誰かを傷つければ、誰かが報復される。

そんなことを繰り返したって、意味がないから。

それと……きっと、私を守るため。

二度と、あんな事件に巻き込まないため。


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