この恋、国家機密なんですか!?
マキさんの姿を見て、もし自分が宗一郎さんの不倫相手だったらと思うと、恐ろしくなった。
不倫なら……さっさと終わりにしなきゃ。
これほどに他人のプライドを打ち壊して不幸にしてまで、既婚者を奪おうとは思えない。
そんな思いも手伝って、私は決心し、みんなと別れた。
だけど私は……もしセカンドだったとして、本当にあっさりと宗一郎さんと別れられるだろうか?
寒風吹きすさぶ中、迎えに来てくれる人もなく、ひとりで歩く。
さむっ。
アパートまで、20分くらいあるだろうか。
スマホを取り出すも、ラインの通知ランプ……ついてない。
たしか今度宗一郎さんのお休みは、1週間後だっけ?
前回の逢瀬の翌日、お腹ペコペコで起きた私はひとりきりだった。
サイドテーブルに、そんな内容のメモがあっただけ。
「なんて愛情のない男なんだ!」
私はわざと大きな声で言ってみる。
ひとりきりになるのは怖い。
だけど、その恐怖を振り払え。
私は宗一郎さんの秘密を暴くんだ!
あのただ者じゃない男の、すべてを暴いてやる。
好きだからって、情けは無用。
「唯、行きまーす!」
私は昔のロボットアニメの真似をして、叫ぶ。
「うるせーぞ!何時だと思ってんだ!」
近隣住民に叱られた。
「……すみません……帰還しまーす……」
私は振り上げた手をそろりと下ろし、そそくさと人気のない路地に入っていった。
ここを抜ければ、アパートの近くにショートカットできる。
……はずだった。