この恋、国家機密なんですか!?


アパートの階段を駆け上がると、ドアを開ける。

指が震えて、なかなか鍵穴にカギが入らない。

なんとか開けて中に体を滑り込ませると、すぐにカギをかけた。

外に耳をすませる。

足音は、聞こえなくなっていた。


「……よかった……」


安心すると、体中から力が抜けて、冷たい玄関に座り込んでしまった。

体中が震えて、歯がかちかちと鳴る。

いったい、なんだったんだろう。


「や、やめよう、考えるの……」


髪の毛を洗うのも怖かったけど、私はさっとシャワーを浴びて、ベッドにもぐりこんだ。

だけど、やっぱりなかなか眠れなかった。

窓を揺らす風の音にさえ、おびえた。


「ふええ、最悪だ~……」


宗一郎さんの秘密がどうとかって場合じゃない。

でも、このとき私は、このことを交通事故未遂程度にしか思っていなかった。

この日だけだと思っていたんだ。

だけど、さらに最悪なことに……旅行会社支店との打ち合わせ後の帰り道や、添乗の後……仕事帰りにも、この謎の足音が3日連続で続いたのである。

さすがに恐ろしくなった私は、泣きながら宗一郎さんにLINEでメッセージを送った。


『帰り道、変な足音がします。つけられているのかもしれません。怖いです』


すると、すぐに電話がかかってきた。





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