この恋、国家機密なんですか!?
『代わりに、俺の知り合いを唯のところによこすから。俺がそっちに行けるまで、あと……そうだな、3日待ってくれ』
それじゃ当初の休みの予定と一緒だ。
全然、私のためにがんばってくれていない。
たぶんこれは、私の今世紀最大のピンチだっていうのに。
一度芽吹いた不満は、あっという間に増殖していく。
『添乗員の仕事は休めないか?』
そんなたわいもない問いかけにも、ムッとする。
「休めないよ。誰かと一緒で、いきなり抜けるなんてできないもん」
『不審者は帰りに必ず現れるんだろ?しばらく休めないのか』
相手は私の嫌味なんか、なかったように受け流す。
「しばらくって、どのくらい?」
『そうだな……ひと月くらいか』
「クビになっちゃうよ!あのねえ、私はパートしてる人妻じゃないの。親にパラサイトしてる学生でもないの。自分で働かなきゃ、生きていけないの!」
思わずいら立って一気に言ってしまうと、やがて電話の向こうから、ため息が聞こえた。
『どうせ、いつかはやめるんだろ?添乗員。次の仕事が見つかるまで、援助はしてやるから。命が危険にさらされるより、よっぽどいい選択だと、俺は思うけど?』