この恋、国家機密なんですか!?


「いつ来たの?」

「今さっき。俺も仕事だったから」

「連絡くれればよかったのに」


そうしてくれたら、いくら疲れていても、もう少し買い物してきて、食事を作ったのに。

宗一郎さんは仕事がすごく忙しい人で、週に1回会うこともままならない。

だから、会えたときくらいは、彼女らしいことをしてあげたいのにな。


「ああ、連絡してなかったか」


まるで重要なことではないと言うように、冷めた顔でスマホを見る宗一郎さん。


絶対確信犯だよ!


まあ、私はひと月のアサイン表(添乗の指名が入ることをアサインという)を渡しているから、それに従って休みの日に来るのだろうけど……。


私は周りを見渡して、小さくため息をつく。


出かける前に散らかっていた部屋は、なぜかぴかぴかになっていて、散乱していたはずのメイク道具も、きちんとケースに収まっていた。

それは、宗一郎さんが勝手に片づけた証拠。

触らないでといった場所には決して触らない人だけど、それにしても恥ずかしい……掃除機くらいかけておけばよかた。


「風呂をわかしているんだが、入るか?」


私のくたびれた格好を見て言うんだろう。


宗一郎さんは意地悪だ。

いつもいつも、嫌がらせのように、突撃訪問してくるのだから。

私の、「好きな人の前でくらい、キレイでいたい」なんて乙女心は、華麗にスルーして。

私の部屋の惨状や、気の抜けたかっこうを見て、わざわざ笑いにくるのだ。



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