この恋、国家機密なんですか!?
思わず後ろを振り返ると、大西さんが全速力で路地の角へ向かっていくのが見えた。
うわあ、可愛いけど速い!
変なところで関心していると、高浜さんが私の前に立つ。
「壁を背にして。俺から離れないでください」
本来ならSPは、警護対象者を警護するのが仕事。
高浜さんは決して私から離れようとはしなかった。
「待てっ!」
電柱に手をつき、角を曲がりかけた大西さんの声が聞こえる。
するとその陰から、人影が飛び出してきた。
全身黒づくめのその人は、暗くて顔がよく見えない。
けれど、その右手の銀色に光る何かが、街灯の明かりを反射した。
「ナイフか……!」
めちゃくちゃに振り回されるそれは、大西さんの胸を狙っているみたい。
まさかそんな凶器が目の前に出てくるとは思わず、声も出ない私。
恐怖で震えだした指先を、高浜さんが強くにぎった。
「大丈夫です」
その言葉の通り、大西さんはストーカーのナイフを避け、その腕をひねり上げた。
「う……!」
ストーカーの手からナイフが落ちる。
かつんとそれが路上で音を立てた、そのとき。
────パァン!
乾いた音がして、私は耳を疑った。