この恋、国家機密なんですか!?
side宗一郎
大晦日、唯は昨日の報告書と清算書を会社にもっていかなくてはならないと言ってでかけた。
俺はタクシーで警察庁へと向かう。
唯には同じ課の部下を見張りにつけたから、大丈夫だろう。
そう、事件はまだ終わっていない。
むしろ、始まったばかりなのだ。
唯にストーカーがつきまとっていると聞いたとき、俺の直感が言った。
『あのときと、同じだ』と。
ひとり逮捕できたのは良かったが、あのとき大西の気をそらせるために空砲を撃った犯人は、まだ見つかっていない。
さて……どうしたものか。
これからのことを思うと、ため息が出る。
唯の仕事を強制的に休ませたはいいが、早く決着をつけなければ……。
『あのとき』と同じことが起きることのないように。
車内でぼんやりしていると、不意に昔のことを思い出した。
あれは、唯と出会ったばかりのころ……。