この恋、国家機密なんですか!?
『だからスポーツ推薦で、有名な高校にも入れたんですけど』
『けど?』
『やめちゃったんですよね……途中で』
唯の声に、かげりが生じた。
『やめたって、陸上を?』
『ううん、高校を。だから私、中卒なんです』
それは意外だった。
唯は話していても話題が豊富で、頭の良い印象しかなかったからだ。
少しとぼけたような雰囲気と頭の良さのアンバランスさが、俺を安心させていた。
『高校で思ったようにタイムがのびなくて……周りに、「やる気ないんじゃないか」って陰口たたかれて。でも、推薦だから陸上だけやめてのほほんといるわけにもいかなくて。クラスでも、高校デビューしたての、色気づいた女の子たちになじめなくて。私、当時は男の子かってくらいサバサバしてて、途端に浮いちゃったんです』
今のロングヘアからは想像がつかないが、それはそれで可愛かっただろうな、と俺は余計なことを思った。
『で……もういいやってなって、中退しちゃったんです』
『ふうん……でもすごいじゃないか。中卒だって、立派にあんな難しい資格試験に通って、添乗員になったんだから』
やっぱり唯は、もともと頭がいいのだ。
感心すると、彼女は腕の中で、ふふと笑う。