この恋、国家機密なんですか!?


やっと目的地に到着したときには、日が暮れて完全に夜になっていた。

職業病だろうか、初めてのお泊まりという興奮からだろうか、私は一睡もしていない。


「さっむいですね~……京都にくるなら、そう言っておいてほしかったな~……」


ちらりと宗一郎さんをにらんで嫌味を言うけど、本人は聞こえないふりをして聞き流していた。


そう、私たちがたどり着いたのは、京都だった。

しかも日本海がわの、はじっこのほう。

やけに手足の先が冷えると思っていたら、外にはうっすらと雪が積もっていた。

そりゃあ寒いはずだよ!


「まあ、そう怒るな。今日の宿に着いたぞ」

「へ……っ」


町から離れた山奥に、その建物はあった。

何度かパンフレットで見たことのある、大きな旅館だ。

いつもの修学旅行や安いツアーでは絶対に寄れない、老舗旅館……。


「う、うそ~!」


私の記憶が正しければ、この旅館、1泊一人7万円近くしたはず……。

どどどどうしよう。
お金そんなに持ち合わせてない。

でも、当日キャンセルしたらキャンセル料払わなきゃいけないから、結局もったいない。

私はこっそりクレジットカードが財布に入っているか確認して、びびりながらその入り口をくぐった。


< 68 / 214 >

この作品をシェア

pagetop