この恋、国家機密なんですか!?
「いらっしゃいませ」
深々と頭を下げる、フロントスタッフ。
すると奥から、静かな足音を立てて、着物を着たキレイな女の人が出てきた。
たぶん、若女将だろう。
「いらっしゃいませ!ああよかった宗一郎さん、無事に着いたのね」
若女将は満面の笑顔で、宗一郎さんに話しかける。
え……知り合いなのかな。
すっとしたまぶたに黒目がちの瞳、すっと通った鼻筋に、ちょっと意地悪そうに見える薄い唇。
どこかで見たような顔……。
「姉さん、雪が降ってるからといってそんなに心配しなくても大丈夫ですよ」
宗一郎さんはいつもの無表情で言った。
ね、姉さん!?
あー、そういえば似てる!
男女だから骨格は違うけど、近いDNAを感じる!
「相変わらずクールね、宗一郎さんは」
若女将はふふと笑い、こちらに向かって頭を下げた。
「ようこそおいでくださいました。宗一郎の姉の、京香でございます」
「あっ、えと、伊藤唯です!」
「宗一郎がお友達を連れてくるなんて……ううん、私がここに嫁いでから遊びに来てくれたのははじめてなの。どうぞ、くつろいでいってくださいね」