この恋、国家機密なんですか!?
時計を見ると、もう9時だった。
たぶん、宗一郎さんが京香さんに頼んで、遅い時間でも食事ができるようにしてくれたんだろう。
まあ、大晦日だから年越しを楽しみたいお客様のために、厨房もいつもより遅くまで開いているんだろうけど……。
「唯、メシ」
「は~い、って……か、か、カニぃぃぃぃ~!!」
机の上を見て、私は驚愕した。
そこには天ぷらだとかお吸い物だとかお造りだとか、旅館の定番と言われる料理が並んでいた。
その中央に、籠に盛られたカニの足がどーんと置かれている。
「ん?甲殻類、嫌いか?」
「き、き、嫌いじゃないですとも!」
カニもエビも好きだけど、添乗員のお給料じゃ、なかなか手が出ない。
ツアーで、身が入ってるんだか入ってないんだかわからないカニは嫌というほど見たけどね。
「ほんものだ~、ほんものの足が太いカニさんだ~!」
「風呂に興奮したり、食事に興奮したり、忙しい奴だな」
普通はお風呂が先のことが多いだろうけど、私たちは食事を先に堪能することにした。
カニの身を取るのに必死で、より目になった宗一郎さんが、可愛く見えた。