この恋、国家機密なんですか!?
だのに、バスの到着が1分でも遅れれば、ぶーぶー文句を言う(私に)。
もうご老体なのに、自分は若いと思い込んで無理をして、スキップで山登りしたりして心肺停止状態になる。
お酒を飲みすぎた状態でお風呂に入って、転んで頭を切って、血まみれになったりする。
その場合、添乗員は人工呼吸に心臓マッサージまでして、救急車を呼ばなければならない。
まあ、そんなことは稀だけれど、皆無ではないのが辛い。
宴会の料理が気に入らないだとか、客室に幽霊がいるから部屋を変えてほしいだとか、そんな要望くらいならまだ可愛いものだ。
旅館の人には嫌な顔をされるけど、その場合も添乗員はなんとか他の料理や部屋に変えてもらえるよう、ひたすら頭を下げる。
要望があればガイドみたいなこともするし、宴会でお酌もするし、カラオケも歌う。
とにかく、なんでもジジババの言うことを聞いて、下僕のように働き続けるのが、添乗員というものだと、私は身をもって知った。
2年経って、私は疲れきっていた。
理想を裏切る現実。
理不尽な要望。っていうか、文句。
いつか自分もああいったジジババになっていくんだなあという、恐怖。
華やかそうに見えた職業の裏を知り、もうやめてしまおうかと思っていたころだった。
私は、ある慰安旅行に添乗することになった。