Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
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厨房に入ってランプの灯りをつけたメオラは、そこに思いがけない人影を見つけて、あやうく悲鳴を上げかけた。
「ジラ!? どうしたの、こんな夜更けに厨房に来て。しかも灯りもつけないで」
そこにいたのは、侍女仲間のジラだった。
メオラと相部屋で、メオラとともにエルマ――ルドリアの世話をしている。
ジラは別段驚いた様子もなく、落ち着いて答えた。
「喉が渇いて目が覚めたの。灯りは――水を飲むだけだからいらないかと思って。
あなたこそどうしたの? 目が覚めたとき、部屋にいなかったからびっくりしちゃった。どこに行ってたの?」
「わたしは……ちょっと厠に。そしたらさっきルドリア様に会って」
「姫様に? こんな夜更けに?」
「ええ、眠れないんですって。だからお茶と夜食をお持ちしようと思って。ほら、フシル様がくださったお菓子があったでしょう」
「ああ、あれね」ジラはメオラのすぐ隣の棚を指差した。
「その棚の、上から三段目にあるはずよ」
「ありがとう」
メオラは礼を言って、棚を探る。
探していたものはすぐに見つかった。
それを持って振り返ると、ジラは火をつけて湯を沸かしていた。
「メオラはそのお菓子、器に移しかえてくれる? その間にわたしがお茶を淹れておくから」
厨房に入ってランプの灯りをつけたメオラは、そこに思いがけない人影を見つけて、あやうく悲鳴を上げかけた。
「ジラ!? どうしたの、こんな夜更けに厨房に来て。しかも灯りもつけないで」
そこにいたのは、侍女仲間のジラだった。
メオラと相部屋で、メオラとともにエルマ――ルドリアの世話をしている。
ジラは別段驚いた様子もなく、落ち着いて答えた。
「喉が渇いて目が覚めたの。灯りは――水を飲むだけだからいらないかと思って。
あなたこそどうしたの? 目が覚めたとき、部屋にいなかったからびっくりしちゃった。どこに行ってたの?」
「わたしは……ちょっと厠に。そしたらさっきルドリア様に会って」
「姫様に? こんな夜更けに?」
「ええ、眠れないんですって。だからお茶と夜食をお持ちしようと思って。ほら、フシル様がくださったお菓子があったでしょう」
「ああ、あれね」ジラはメオラのすぐ隣の棚を指差した。
「その棚の、上から三段目にあるはずよ」
「ありがとう」
メオラは礼を言って、棚を探る。
探していたものはすぐに見つかった。
それを持って振り返ると、ジラは火をつけて湯を沸かしていた。
「メオラはそのお菓子、器に移しかえてくれる? その間にわたしがお茶を淹れておくから」