Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
館へたどり着くと、むすっとした顔のメオラが出迎えて、エルマの顔を見るなり、
「明日はわたしも行くからね」
と言って、エルマを苦笑させた。
自分とカームだけ留守番だったのがよほど気に食わなかったようだ。
「わかった」と笑いながら頷いて、エルマは隣に立つラシェルを見上げた。
「夕食にはまだ早いけど、どうする。
病に伏せているという使者の者たちにはまだ会いに行ってないだろう? これから行くならわたしも行くが」
ラシェルもそれを考えていたようで、すぐに頷いた。
「部屋の場所は館を出る前に教えてもらった。行こう」
歩き出したラシェルに、エルマとカル、メオラが続く。
たどり着いた部屋は館の主であるギドの部屋と同じ階にあった。
扉の前に立ったラシェルは、こんこん、と扉を二回叩くと「ラシェルだ。入るぞ」と声をかけて扉を開いた。
部屋の中には寝台が一台。そこに横たわっていた中年の男は第一王子の姿を目にして、驚いたように目を見開いた。
「これは、ラシェル殿下……!」
病で重い体をむりに起こそうとする彼をラシェルは手で制して、寝台の隣の椅子に腰掛けた。
「起き上がらなくていい。調子はどうだ」
「は……、相変わらず、といったところでしょうか。私などはまだ症状は軽いものです。私より先にセダへ来た者などは、もう話すのも辛いようです」
そう言う彼も、息が荒く辛そうだ。