Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
呟いて、エルマはふいに顔を上げた。
どこか呆然としてメオラをまじまじと見つめるエルマに、「どうしたの?」とメオラが尋ねる。
「今、何て言った?」
「え?」
「そもそも本当に病なのかすらわからない、そう、言ったな?」
ただならぬ様子のエルマに、メオラはきょとんとしながら頷いた。
「ええ。だって、聞いたこともない病だから。病じゃなくて……中毒とか、そういう可能性もあるんじゃないかって……」
「メオラ、でかした!」
突然大声を上げて立ち上がったエルマに、メオラは目を丸くして「ど、どうしたの?」と問う。
しかしエルマはそれには構わず、メオラの手を取って部屋を飛び出した。
「小さい頃に聞いたことがある。……病だと思い込んでいたから気がつかなかった」
言いながら、エルマはラシェルの部屋の扉を軽く叩く。
そして「誰だ?」と返ってきた声に、「わたしだ。すぐに出てこい!」と声を抑えながらも強い口調で言った。
エルマはそのまま、ラシェルが出てくるのも待たずに、隣のカルの部屋も同じように叩いた。
慌ただしい気配に気づいて、アルの一同も部屋から出てくる。
「エルマ、どうしたんだ」
緊張した面持ちでカルが尋ねる。
エルマは一つ頷くと、「確認したいことがある」と言って全員の顔を見回した。