Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
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翌日、ラシェルとエルマ、カル、メオラ、そしてラグの五人は、エルマの説を確かめるために川の上流へ向かった。
カームとテオは屋敷に残って、屋敷の井戸水に毒があるのかどうかを調べている。
領主の館の北側にそびえる山はなだらかで、それほど険しくない。
そのためアルの四人はもちろん、ラシェルも苦も無く登ることができた。
川沿いには色とりどりの花が咲き乱れ、一見するとのどかな光景――なのだが。
「つけられてるな」
ふいに、エルマが言った。
その表情に険しさは無く、声は四人に聞こえる程度に大きく、尾行者に聞かれない程度に小さく調節されている。
――尾行に気づいたことを、尾行者に気取られないためだ。
エルマの意図を正しく汲み取ったのだろう、ラシェルもまるで他愛ない会話でもするような顔で、「それは本当か」と小声で尋ねる。
「ああ。四、五人ってところか……。まだ襲ってくると決まったわけじゃない。とりあえずはこのまま様子を見よう」
エルマの言葉にラシェルが頷く。
後の三人は何の反応も示さなかったが、これは三人ともエルマほど器用な真似ができないからだ。
下手に反応しようものなら尾行者に勘付かれてしまう。
三人にできるのは、とにかく表情を変えずに、何も言わないでいることだけだ。
翌日、ラシェルとエルマ、カル、メオラ、そしてラグの五人は、エルマの説を確かめるために川の上流へ向かった。
カームとテオは屋敷に残って、屋敷の井戸水に毒があるのかどうかを調べている。
領主の館の北側にそびえる山はなだらかで、それほど険しくない。
そのためアルの四人はもちろん、ラシェルも苦も無く登ることができた。
川沿いには色とりどりの花が咲き乱れ、一見するとのどかな光景――なのだが。
「つけられてるな」
ふいに、エルマが言った。
その表情に険しさは無く、声は四人に聞こえる程度に大きく、尾行者に聞かれない程度に小さく調節されている。
――尾行に気づいたことを、尾行者に気取られないためだ。
エルマの意図を正しく汲み取ったのだろう、ラシェルもまるで他愛ない会話でもするような顔で、「それは本当か」と小声で尋ねる。
「ああ。四、五人ってところか……。まだ襲ってくると決まったわけじゃない。とりあえずはこのまま様子を見よう」
エルマの言葉にラシェルが頷く。
後の三人は何の反応も示さなかったが、これは三人ともエルマほど器用な真似ができないからだ。
下手に反応しようものなら尾行者に勘付かれてしまう。
三人にできるのは、とにかく表情を変えずに、何も言わないでいることだけだ。