Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
本当に感動したのだろう、ラシェルは心なしか頬が上気している。
その様子に、なんだかエルマまで嬉しくなってしまう。
いつもほかほかした笑顔を浮かべて温和そうなラグだが、短剣の扱いはアルの中でも右に出る者はないほど上手いのだ。
短剣一振りで長剣にも槍にも弓矢にも渡り合い、投げれば百発百中だ。
今もラグは「いやー、照れるなあ」と困ったように笑っているが、狩りのときもそんなのんきな笑顔を浮かべながらすこし手首を捻るだけで獲物を捕ってしまうのだから、なかなかに侮れない。
「さて、」エルマは言って、地面に座り込んでいるカルを見る。
「カル、大丈夫か?」
心配そうに覗き込むエルマに、カルは顔をしかめて見せた。
「痛くて泣きそう」
「よし、大丈夫だな」
カルの軽口を受け流して、エルマは言う。
「じゃあ、屋敷に戻ろうか」
その言葉に全員が頷き、エルマに続いて全員が歩き出そうとする。
ラグはカルの左側にまわって、傷口に当たらないよう気をつけながら肩を貸す。
突然、その後方から「う……」とうめく声がした。
小さいようでよく響いたその声に、全員が振り向く。
声を発したのは刺客のうち一人、ラシェルが倒した男だ。