Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
13
*13*
「ルドリア様、そろそろ……」
ノックの後に扉の外から聞こえた声に、エルマのうつむいた頭がピクリと揺れた。
寝台に横たわるラシェルの寝顔をぼんやりと眺めたまま、「今行きます」と疲れきった声で答え、エルマはのろのろと立ち上がる。
その、あまりに憔悴しきったエルマの様子に、メオラは表情を曇らせた。
「エルマ、無理しないで。行きたくないなら行かなくても……」
「いや、行くよ。何もできなかったから……せめて、見届けなきゃいけないだろ」
そう言って気丈に作る笑顔は、しかし明らかに弱々しい。
「メオラはラシェルについていてあげてくれ」
小さな声で言って、エルマは部屋から出て行ってしまう。
今日、この日。
この日まで、エルマはずっと戦ってきた。
なんとかしてリヒターの罪を軽くすることはできないかと、王城中を走り回って。
だが、それに取り合う者はなかった。
王族を手にかけた者は死罪。
それは、誰であっても変えられないことだと。
「ルドリア様、そろそろ……」
ノックの後に扉の外から聞こえた声に、エルマのうつむいた頭がピクリと揺れた。
寝台に横たわるラシェルの寝顔をぼんやりと眺めたまま、「今行きます」と疲れきった声で答え、エルマはのろのろと立ち上がる。
その、あまりに憔悴しきったエルマの様子に、メオラは表情を曇らせた。
「エルマ、無理しないで。行きたくないなら行かなくても……」
「いや、行くよ。何もできなかったから……せめて、見届けなきゃいけないだろ」
そう言って気丈に作る笑顔は、しかし明らかに弱々しい。
「メオラはラシェルについていてあげてくれ」
小さな声で言って、エルマは部屋から出て行ってしまう。
今日、この日。
この日まで、エルマはずっと戦ってきた。
なんとかしてリヒターの罪を軽くすることはできないかと、王城中を走り回って。
だが、それに取り合う者はなかった。
王族を手にかけた者は死罪。
それは、誰であっても変えられないことだと。