Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
――わたし、こんなのばっかりだ。
この前だって、そうだった。
一人でラシェルの寝顔を見ながら、とりとめもないことをぐるぐる考えて。こんなのばかり――もううんざりだ。「いいかげん起きなさいよ、ばか!」
メオラは小さく怒鳴って、ラシェルの額を軽く指で弾く。
もちろん、そんなことでラシェルが目を覚ますとは思っていなかった。
――思って、いなかったのに。
「………………いっ、てぇ……」
ラシェルの唇が薄く開いて、かすれた声を上げる。
メオラは驚きに一瞬身を引き、起き上がろうとするラシェルに慌てて駆け寄り、その背に手をそっと添えた。
「ラシェル、気分はどう? わたしがわかるわよね?」
「ああ、傷が痛むが……他はなんともない。すまないな、メオラ」
答える声はかすれてはいるが、はっきりとしている。
メオラはほっと息をついて、文机に置いてあったグラスを手に取った。
「ラシェル、お水飲める?」