Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-



 扉をドンドンと叩く音がして、エルマはびくりと肩を震わせた。

次いで、扉の外から「エルマ!」と呼ぶ声。――ラグの声だった。



 どこか切羽詰まったようなその声に、エルマは眉をひそめる。

なにか、あったのだろうか。



 扉を開けると、ラグは周囲に誰もいないことを確認して部屋に入る。

――他人に聞かれてはまずい話だと悟り、エルマは嫌な予感に胸をざわつかせた。



「ラグ、どうしたんだ。何かあったのか?」



 そう尋ねたエルマに、

「悪い知らせが一つと、いい知らせが一つある」

 と、珍しく険しい顔をして言う。



「じゃあ、悪い方を先に」



 そう言うエルマに「わかった」と頷き、ラグは次にとんでもないことを言った。



「ルイーネとシュタインの国境付近で暴動が起きた」



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