Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
エルマはラシェルがふざけている間に、ラシェルの用件が何なのか、見当をつけていたらしい。
メオラには、なぜここでルドリア姫が出てくるのかがさっぱりわからなかったが、ラシェルとイロの様子を見るに、エルマの推察は正しいのだろう。
そんなことを暢気に考えていたメオラだが、次のエルマの一言に、全身の血が凍るような思いをすることになる。
「要するに、わたしにルドリア姫になりすませと、そう言いたいのでしょう?」
ラシェルもイロも、目を見開いてエルマを見た。
用件を言い当てられ、驚いたのだろう。
そしてメオラも、二人と似たような表情をしていた。
「エルマ、それって……」
どういうこと、と言いかけたメオラを振り向き、エルマはわずかに微笑んだ。
大丈夫だと、なだめるように。
「どうしてそこまでわかった?」ラシェルが訊く。
前に向き直り、エルマは答えた。
「宰相様がこれまで門前払い同様の扱いをしてきたアルの民などに膝を折り、城内に招いてラシェル殿下と引き合わせたことから、わたしを下賤の者とは扱えない事情でもあるのかと考えました。
そしてその事情とは、ラシェル殿下と関係があることだと。
それから、ラシェル殿下がつい先程、わたしを見て『よく似ている』と言ったこと、じきにご結婚されるはずの殿下が『妃になってほしい』と言ったこと、
ルドリア姫の髪がわたしと同じ緑色だということをつなぎ合わせると、このような結論に至りましたが、違いましたか?」