Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
そして夏市の終わった今日。
シュタインに来ていた商人がルイーネに帰るため、国境では多くの人の流れが生まれる。
つまりはそれだけ、ルイーネとシュタインの民どうしの交流が増えるということ。両国の民が行ったり来たりするうちに互いの国に流れる噂が飛び交い、噂の内容に反駁しあった結果、暴動にまで発展した。
これが王都まで伝われば――最悪、戦争になる。
ルイーネが動く前に、なんとかしなければならない。
だが、本物のルドリアを見つけない限り、ルイーネがこの事態を許すはずがない。
「すぐにラシェルに報告しよう」
そう言って部屋を出ようとしたエルマを、ラグは呼び止める。
「いい知らせをまだ言っていない」
「……そうだったな。それで、いい知らせって?」
早くラシェルに話さなくては、と焦りながらも、エルマは尋ねる。早くしろ、と言いたげな顔をしたエルマに、ラグはたった一言こう言った。
「ルドリアが見つかった」