Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
「入っていいぞ」とエルマが答えると、ラシェルが遠慮がちに扉を開き、入ってくるなり吹き出した。
「……なんか、懐かしいな」
「そうだな。ラシェルに初めて会ったときと同じ格好だ」
エルマが頷くと、メオラがにやりと笑った。
「ラシェルがふざけて偉そうな態度を取ってたときと、ね」
「メオラ……いいかげん、それは忘れてくれないか」
気まずそうに視線を逸らすラシェルを見て、メオラはくすくすと笑う。
それを見て、エルマは小さく首を傾げた。
(そういえば、メオラは最初かなりラシェルを嫌っていたよな……)
いつの間に、こんなに仲良くなっていたのだろう。記憶を遡ってみても、思い当たらない。
なんか、夫婦みたいだな。
苦い顔のラシェルと、彼をからかうメオラを見ていると、自然とそう思った。
「あ、そうだエルマ」
ぼんやり考えているとメオラに呼ばれて、エルマは慌てて「どうした?」と訊く。