Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
だが、ラシェルの心配ももっともだった。
実際にエルマ自身も不安はあった。
ルイーネはエルマを見るなり斬りかかるかもしれないし、反対に友好的な態度かもしれない。
だから前者である場合のために、護衛としてラグを連れて行き、後者であったときのために、あわよくば和平を結ぶための正式な国使も用意してある。
大丈夫。エルマは自分に言い聞かせた。
城を出て馬屋へ赴くと、用意してあった馬が二頭、エルマとラグを待ち受けていた。
一頭は真っ白な馬――エルマの愛馬、リアだった。エルマはリアを見るなり、笑みを浮かべて駆け寄った。
「リア、久しぶりだな」
言いながら、エルマは白馬の背を撫でる。
リアはそれに応えるように、エルマの頬に鼻面を寄せた。
「よかったな、エルマ。リアに忘れられてなくて」
その声は馬屋の奥から聞こえた。
エルマは驚いて声のした方を見る。
奥から現れたのは、カルとフシルだった。