Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
「リアは賢いからね。誰かと違って」
にやにや笑いながら言ったラグを、カルは「誰だよそれ」と、軽く小突いた。
フシルがそれを見て小さく笑う。
「フシル、メオラに聞いけど、話があるそうだな。……場所を変えようか?」
エルマが言うと、フシルは笑って首を振った。
「聞かれてはいけない話ではないので、お気遣いなく。リヒター王子のことで、すこし」
フシルの口から出たその名前に、エルマは驚いて目を見張った。
「リヒターのこと?」
「はい。エルマ様も不審に思っているはずです。リヒター王子が、なぜエルマ様の正体を民衆の前で明かしたのか」
もちろん、思っていた。すると、リヒターはフシルに話したのだろうか。
「直接教えていただいた訳ではありません」と、フシルは言った。
「王子の最後のお言葉を聞いて、私が勝手に推測したことですが」
「構わない。教えてくれ」
エルマは言った。
リヒターは、エルマの正体を明かすことで何を望んでいたのか。
ルイーネに行く前に、知れるのであれば知っておきたい。