Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
無茶じゃないかもしれない。
なにしろ、ルドリアはルイーネにいるのだ。
シュタインに戻ってくることもしなければ、ルイーネ王家がそのことをシュタインに伝えることもしない。
それはつまり、ルドリアも婚姻を望んでおらず、ルイーネもそれに賛同しているということ。
さらに、その状態が続いているのに未だ開戦の布告もないということは、ルイーネ側も和平を望んでいるのかもしれない。
確証は、どこにもない。
だが、それに賭けてみよう。
「ありがとう、フシル。教えてくれて」
「いえ、私こそ面倒を頼んで申し訳ありません。リヒター王子の最後の望み、叶えてさしあげたかったのですが、私ではどうしようもないので」
そう言ったフシルは安心したように笑った。その、穏やかな顔。
尋ねるのは野暮な気はしたが、エルマは尋ねずにはいられなかった。
「なあ、フシル……もう、大丈夫なのか」