Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-



 その返答に、エルマは満足そうに頷いた。


「なら、こうしましょう。――わたしが、ルイーネとシュタインの両国に和平をもたらして見せましょう」



 あまりに突拍子もないその申し出に、サリアナもディネロも、目を丸くしてエルマをまじまじと見つめる。



「今起きている暴動を一兵も動かさずに鎮め、婚姻によらない和平条約を結んで見せましょう」



 言いながら、エルマは足がわずかに震えているのを感じた。



 暴動を鎮められるかどうか、本当は、勝算は五分五分だ。

シュタインで立ててきた計画は、計画というより賭けに近い。



でも――それでも今ここで、それを見せてはいけない。

すこしでも自信が無さそうに見えたら、サリアナの合図で、エルマはすぐにでも殺される。



 だから、笑え。



「わたしがそれを成し遂げたときには、わたしが悪魔などではなく、あなたの子なのだと認めていただきたい。失敗すれば――なぶり殺しにするなり、お好きにどうぞ」



 にやりと笑って、エルマは言った。

そして、おまえの番だ、と言うように、振り返ってラグを見る。



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