Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
サリアナも馬鹿ではない。
エルマの意図を理解して、悔しげに顔を歪めながらも兵たちに合図して武装を解かせた。
それを見届けて、エルマも弓矢を下ろす。
「では、ディネロ陛下。いったん王宮へお連れいただけますか? 落ち着いて話がしたい」
エルマが言うと、ディネロが「もちろんだ」と頷いた。
そして兵たちを振り返ると、
「おまえたち、」
と、声をかける。
処分を恐れてか、兵たちは各々怯えたような顔をしていた。
「母上の供をして王宮へ帰れ。国使殿は私がお連れする。……それから今回の件、おまえたちの罪は不問に処す」
と、ディネロに令を下され、兵たちがあからさまに安心したような顔をする。
だが、安心したのもつかの間。
「だが、王宮に帰ってから、各々よく考えるように。――おまえたちの主が誰なのか。王と王母、おまえたちが支えるべきはどちらか」
そう言うと、「わかったら行け」と言い捨てて、ディネロはエルマに向き直った。
「では、行こうか。――ルイーネ城へ」