Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
「メオラ殿やカルや、エルマ様が王城にいてくださるのも、あと少しなのですね」
お三方が去ってしまわれると、心細くなります。
そう言って、フシルは寂しげな笑みを浮かべた。
だが、メオラの方はどうしてあと少しなのかがわからない。王城を去る、なんて話はなかったはずだ。
メオラが首をかしげると、
「だって、もうじきエルマ様がルイーネから帰ってくるのでしょう? そうすれば、三人ともアルの元へ帰るのだと、ラシェル殿下に伺いましたが……。違うのですか?」
と、フシルも首をかしげた。
どう答えればいいのかわからず、メオラは黙り込んだ。
そんな話はエルマからもラシェルからも聞いていない。
おそらくラシェルとエルマの間だけで交わされた話なのだろう。
帰れる、のだろうか。
本当に、アルに帰れるのなら……またエルマの率いるアルで、兄と、カルと、みんなと笑い合えるのなら。
それは、この上ない幸せのはずなのに。