Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
そうだね、とラグは頷く。
おかげでエルマが以外と赤面しやすいことを知った。
「悠長にしてられないって、思い知ったからね」
アルの一族で、ずっと近くに立っていられると思っていた。
アルの先頭を行くエルマの、すぐ後ろには自分がいると。
それが突然、崩れ落ちた。
エルマは形だけとはいえ一国の王子の妃として王城へ行ってしまった。
そのそばについて行ったのは、自分ではなくて妹と友人。
このまま三人が戻ってこなかったらどうなる。
エルマが、帰ってこなかったら。
そう考えて、どれほど恐ろしかったか。
「なんだ、それ」
エルマはラグを見上げて、呆れたように笑う。
そのことを、――エルマが目の前にいて笑っていることを、奇跡のように感じているとは、エルマは思いもよらないだろうけど。
「ま、こんな重たいドレスを着るのも今日で最後と思えば、少しは名残惜しくもなるけどな」
本当に最後になるかは、誰にもわからない。
エルマの計画が成功するかどうかにかかっているのだ。
だけどまるで成功を確信しているように言うのは、ついて来てくれたディネロやルドリアを不安にさせないためだと、ラグは知っている。