Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-



 結局、エルマは予定通りにシュタイン王城を出てから三日目の夜に帰ってきた。


それから条約の正式な発表があったり、ラシェルとディネロとで会談があったりでバタバタしたが、それもようやく落ち着きはじめた。


そしてエルマがシュタインへ帰ってきてから十日になる今日、エルマたちは王城を出て行く。



「長かったね」



 ラグが言うと、「わたしには短かった」と、エルマは笑った。



 と、そのとき。



「わりーわりー、遅くなった」



 声と共に入ってきたのはカルだ。



「カル、何してたの?」と、メオラ。



「んー、ま、今日発つわけだし、ラシェルやレガロなんかは見送りに来てくれんだろ? でも、近衛兵のやつらは当番とかあるし、休憩中に挨拶済ませとこうと思ってな」



「ああ、なるほどね」



「おまえも随分と馴染んだよなあ。おまえが王城の近衛兵なんて、最初はどうなることかと思ったが」



 エルマが言うと、メオラとラグが苦笑した。



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