Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
「なんだ、つまんないの。驚かせようと思っていたのに」
嘘だ。本当は、怖くて言い出せなかった。
「ラシェルから聞いたとき、驚いた?」
メオラが問うと。
「いや、そもそも、わたしがわざわざルイーネまで行って演説なんかして、ラシェルとルドリアの婚約を破棄させたのは、このためだったし」
けろっと暴露したエルマに、メオラは大きく目を見開いた。
「え、うそ」
「まー俺も、なんとなくそんな気はしてた。おまえ、わかりやすいぞ」
「えぇっ!? エルマならともかく、カルにまで気づかれるなんて!」
「おまえそれどういう意味だよ」
軽く睨みつけるカルにはかまわず、メオラは「兄さんも?」と、ラグに問う。
「エルマと一緒にルイーネに行ったのは誰だと思ってるの」
「そうよね……。フシル様も気づいてたのよね。というか、わたしもフシル様に言われて気づいた」
「おまえ、にぶ……」
「うるさいわね」
呟いたカルを睨みつけたメオラに、「あ、ちなみに」と声をあげたのはエルマだ。