Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
後から後から流れ出る涙を止めもせず、エルマはメオラを強く抱きしめる。
その腕の中で、メオラの薄い肩が震えた。
「毎年、夏になったらシュタインに来るから、そのときは会いに行くからな」
「エルマ……ばか」
メオラは言って、エルマを強く抱きしめ返す。
「せっかく泣かないようにしてたのに……っ」
抱きしめあったまま子どものように泣き出した二人を見て、カルは「あーあ、しみったれたのは無しだっつったのに」と、呆れたように笑った。するとラグが、
「でも、カルもちょっと目が赤いよ」
と言って笑う。
「うっせーよ」
と、カルがラグを睨みつけたとき。
扉を叩く音がして、入ってきたのはフシルとレガロ、そしてラシェルだった。
予想だにしなかった光景に、三人ともきょとんとして立ち尽くした。
そんな中、ラグが「ラシェル殿下」と呼びかける。
呼ばれたラシェルは緊張した面持ちで、「あなたは、メオラの兄君だったな」と、応えた。