Elma -ヴェルフェリア英雄列伝 Ⅰ-
「あなたがアルの仲間になったのはもう十五年も前ですから、わたしは当時は五歳でした」
「すると、今は二十歳?」
「はい。それから二年後、七歳のときにアルを抜けました。アルにいる間はあなたのおしめを替えたこともあるんですよ」
「え!? ……それは、なんか恥ずかしいな」
フシルはふふふ、と笑ってみせた。
ふと気になって、エルマはフシルに尋ねてみた。
「どうしてアルを抜けたのか訊いても?」
「ええ、なんのことはありません。
わたしは移民の子で、三つの頃に両親に死なれ、路頭に迷っていたところをカーム殿に拾っていただいたのですが、七歳になる頃にはぐれていた親戚と偶然にも再会できたのです。
散々迷った後、わたしは結局血縁をとりました。
生まれたときから旅の生活でしたから、定住というものに憧れがあったのかもしれません。
それから親戚とシュタインに住み、十歳のときに、ひょんなことから当時七歳のリヒター王子と出会い、
……その、わたしはカーム殿に鍛えられていたことで腕に少々自信があったので、お恥ずかしいことに、剣を下げたリヒター王子を王子と知らず、勝負を挑んでしまったのです」
「それで、どちらが勝ったんだ?」
「リヒター王子です」