ラスト・ジョーカー



 アレンの意図がわからず、エルは怪訝に眉をひそめた。


そんなエルに、アレンは笑みを深めて言う。



「ゼンの旦那はねー、エルちゃんさんを化け物扱いする連中の仲間になんて入ったら、エルちゃんさんが傷つくことになる、って。そういう意味で言ったんだよ」



 予想外の言葉に、エルは目を大きく見開いた。


ゼンを見ると、ばつの悪そうな顔で目をそらす。



「そうなの……?」



 そう尋ねると、ゼンは目をそらしたまま「どっちだっていいだろ」と、ぼそりと言った。


すぐさまアレンが「旦那ってば素直じゃないなあ」とはやし立てる。


それが図星であると裏付けるように、「うるせえな!」と返すゼンの顔はほんのり赤い。



「じゃあ……」



 じゃあ、ゼンはあたしをかばってくれたの?

さっきあたしにマントを被せたのだって、あたしが隊商の人たちの目を見ないようにするためだったの?

あたしは、邪魔ではないの?

ゼンは、あたしが、恐くはないの?



 言いたいこと、訊きたいことはたくさんあった。


しかし、エルが最終的に口にしたのは、そのどれもと違うことだった。



「じゃあ、引き返して隊商の人たちと交渉しよう。仲間に入れてくれって」



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