ラスト・ジョーカー
「どうせたいした額じゃ」「これだ」
男の言葉をさえぎってゼンが取り出したのは、つい先ほど見た白い石――浄化石だった。
え、これ? と、エルはなんだか拍子抜けした気分でその石を見つめた。
その石に不思議な作用があることは知っているが、特に美しくもないそれはやはりエルにはただの石ころのように見える。
だが、隊商の者たちにとってはそうではなかったらしい。
その石を見るや人々はどよめき、皆ゼンの周りに集まる。
「それ、まさか浄化石かい!?」
年かさの女が勢い込んで訊いた。
ゼンは頷き、「これを二十差し上げます。その代わり、〈ハナブサ〉の検問でおれたちをかくまってもらいたい」と言う。
隊商の反応はばらばらだった。
意気揚々と「浄化石二十と引き換えだったら安いものじゃないか」と言う者もあれば、
「でも、かくまうって……検問に引っかかるような輩ってことじゃないか。きっとろくなもんじゃないよ」と言う者もある。
仲間に入れるべきか、入れないべきか。
相談の声が飛び交う中、隊商の一人が「やっぱり長を呼んできましょうよ」と提案したとき。