ラスト・ジョーカー
8
*第三章 銀の鈴 8*
賑やかな野営地から逃れるように、火の明かりが届かない荷車の影にエルは座り込んでいた。
晴れた夜空には満天の星が瞬いている。
エルは温かいスープの椀を両手で包み込むようにして持って、空を見上げながら白い息を吐き出した。
ゼンとアレンは隊商の夕餉の支度を手伝っている。
エルも手伝おうとしたが、エルのやることすべてにガランが悪態をつくものなので、
気を遣ったゼンと麻由良が出来上がったスープをエルに持たせて、休憩してこいと言ってくれたのだ。
それ以上隊商の空気を乱すわけにもいかないので、エルはありがたくスープを受け取ってなるべく目立たない場所に避難し、――今に至る。
ふいに砂を踏む音がして、エルは顔を上げる。
荷車の端から現れたのは、椀を二つ持ったゼンだった。
「ほら」と言って、ゼンは椀を差し出す。
「ありがとう」と言って受け取り中身を見ると、干し飯をふかした粥だった。
そのまま去っていくかに思えたゼンはしかし、エルの隣に腰掛けた。
そしてそのまま粥をすすり始める。
「ゼン、どうしたの? 隊商のお手伝いは終わったの?」
エルがここへ避難してからそう経っていないはずだ。
そう言うと、ゼンは気まずそうに頬をぽりぽりと掻いた。
賑やかな野営地から逃れるように、火の明かりが届かない荷車の影にエルは座り込んでいた。
晴れた夜空には満天の星が瞬いている。
エルは温かいスープの椀を両手で包み込むようにして持って、空を見上げながら白い息を吐き出した。
ゼンとアレンは隊商の夕餉の支度を手伝っている。
エルも手伝おうとしたが、エルのやることすべてにガランが悪態をつくものなので、
気を遣ったゼンと麻由良が出来上がったスープをエルに持たせて、休憩してこいと言ってくれたのだ。
それ以上隊商の空気を乱すわけにもいかないので、エルはありがたくスープを受け取ってなるべく目立たない場所に避難し、――今に至る。
ふいに砂を踏む音がして、エルは顔を上げる。
荷車の端から現れたのは、椀を二つ持ったゼンだった。
「ほら」と言って、ゼンは椀を差し出す。
「ありがとう」と言って受け取り中身を見ると、干し飯をふかした粥だった。
そのまま去っていくかに思えたゼンはしかし、エルの隣に腰掛けた。
そしてそのまま粥をすすり始める。
「ゼン、どうしたの? 隊商のお手伝いは終わったの?」
エルがここへ避難してからそう経っていないはずだ。
そう言うと、ゼンは気まずそうに頬をぽりぽりと掻いた。