ラスト・ジョーカー
「おまえが避難したら、ガランの矛先がおれに向かったから。
おれも逃げろって麻由良さんが」
「あー……えっと、なんかごめんね」
「べつにおまえは悪くないだろ」
不機嫌そうに言う声には、そこに優しさが隠れているのだとエルはもう知っている。
だから素直に「ありがとう」と言って、エルは粥を食べ始めた。
粗末で味がなく、おいしいとは言えないが、とてもあたたかい。
立ちのぼる湯気越しに地平を見やると、地平線の代わりに、砂漠モウセンゴケの骸に登って遊んでいる子供たちが見えた。
なぜかそれにアレンも混じっている。
それを見て思い出すのは、人々の恐怖の目。化け物を忌む目。
「ゼンは、あたしが怖くないの?」
ふいに気になって、エルは尋ねた。
問われたゼンはちらりとエルを見て、すぐにまた前を向くと言った。
「怖いと思ったことはない」
「どうして?」
「どうしてって……、おまえを異形にしたのは人間だし、おまえも元は普通の人間だ。異形になった今だって、中身はただの十五程度のガキだろ。そんなのを怖がるほうがどうかしてる。それに……」
「それに、なに?」