ラスト・ジョーカー
だがすぐに笑顔を引っ込めると、長いまつ毛を伏せて麻由良は言った。
「ガランのことは、許してやってくれ」
「え……」
「あいつは昔、異形の男に娘を殺されかけたことがあるそうなんだ。それ以来、異形を毛嫌いしていてね」
予想外の事実に、エルは目を見開いた。
「そうだったんですか……」
「ああ。だから、あいつの態度をあまり気にしないでほしい」
困ったように笑う麻由良に、エルも笑い返した。
「大丈夫。気にしてません」
慣れているから、という一言は口に出さないでおいた。
哀れみを誘っているようで嫌だったからだ。
だが麻由良はまるでエルの心を読みとったように、
「エルは大変だな。異形であるばかりに、人から恐れられて。心はただの女の子なのに」
哀しげな笑みを浮かべてそう言った。
「エルとゼンは、いつから旅を?」
ふいに問われて、エルとゼンは顔を見合わせる。
「あたしは、つい最近です。〈ユウナギ〉に住んでいたんですけど、いろいろあってゼンについて行くことになって」
「おれは、もうずっと前から旅の生活です」
二人の答えを聞いて、麻由良は「そうか」と言って微笑んだ。