ラスト・ジョーカー



「私は隊商で生まれて、隊商の中で育ったんだ。生まれたときからずっと旅をしてる。

その途中でいろんな人と出会ったが、同時にいろんな異形とも出会ったよ。異形の友達ができたこともある」



 遠い目をして語る麻由良の顔を、ゆらゆらと揺れる火が照らす。


エルもゼンも、黙って続きを促した。



「多くの異形と知り合って話をして、人となにも変わらないなって、思ったんだ。それなのに人に遠ざけられて、嫌われて、……彼らを異形にしたのは、人なのに。

幼い頃の私にできた異形の友達は――その子は隊商の一員だったんだけど、ある日現れた砂漠ハエジゴクに、生贄に差し出された。

その子が食われている隙に他の者が逃げられるようにって」



「そんな……っ」



「ひどいことだよね。私はそのとき五つの子供だったけれど、今でも食われた友達を思い出す。

あのときもっと、私がちゃんと大人たちを説得していれば……って」



 エルはなにも言えずに黙り込んだ。

子供だったのだから仕方がない、あなたのせいじゃない、と言うことは簡単だ。

だが、麻由良の自責の念はきっとそんな陳腐な一言で消えないだろう。



「だからそれ以来、人も異形も、困っている者がいればできるかぎり助ける努力をしようと決めているんだ。私の自己満足に付き合わせてすまないね」



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